監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ、ブレット・カレン、グレン・フレシュラー、リー・ギル、ダンテ・ペレイラ=オルソン
原題:Joker
制作:アメリカ/2019
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/
場所:109シネマズ木場

DCコミックスの「バットマン」がティム・バートンによって1989年に久しぶりに映画化された時の悪役がジャック・ニコルソンによる「ジョーカー」だった。ピエロのようなメイクをした「ジョーカー」は、まるで「口裂け女」のように紅を口角の上部にまで引き伸ばし、絶えず笑っているような風貌がアメコミに登場する悪役らしくてコミカルで不気味だった。

さらに、クリストファー・ノーランによって2008年に映画化された『ダークナイト』の悪役もヒース・レジャーによる「ジョーカー」で、ジャック・ニコルソンによる「ジョーカー」よりも口裂けのメイクが乱雑で汚らしく、それがかえってテロリズムによって乱れてしまった時代の悪役を象徴しているようにも感じられ、もはや正義と見られていたものが正義ではなくて、悪と見られていたものも完全な悪ではないことがあからさまになってしまった時代の混沌としたヒーロー像とさえ感じられてしまった。

そんな悪役の「ジョーカー」がどのようにして生まれたかなんて語るのは野暮と云うもので、コミックの悪役(ヴィラン)はそのままの形でポッと生まれたものなんだと解釈するべきだとはおもう。でも、どんな凶悪犯罪者でも、最近の日本で云えば川崎の通り魔事件や京都アニメーションの放火事件の犯人でさえも、生い立ちの中に犯行に及ぶまでのキーが必ず隠されているものだろうから、それがどんなものかと探る行為にはとても興味があるし、そこに「悪」と呼ばれるの源泉があるんじゃないかとおもったりもする。だから、「ジョーカー」が生まれた過程を追いかける映画を観るのは面白かったし、ホアキン・フェニックスの演技も凄みがあって素晴らしかった。

先日、山形で観たワン・ビンの『死霊魂』が今年のベストワンではないかとおもっていたけれど、うーん、このトッド・フィリップスの『ジョーカー』もベストに近いなあ。

→トッド・フィリップス→ホアキン・フェニックス→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★★