
監督:セス・マクファーレン
出演:マーク・ウォールバーグ、ミラ・キュニス、ジョエル・マクヘイル、ジョヴァンニ・リビシ、エイディン・ミンクス、パトリック・ウォーバートン、マット・ウォルシュ、ジェシカ・バース、ビル・スミトロヴィッチ、ラルフ・ガーマン、アレックス・ボースタイン、ローラ・ヴァンダーヴォート、サム・J・ジョーンズ、ノラ・ジョーンズ、トム・スケリット、(声)セス・マクファーレン
原題:Ted
制作:アメリカ/2012
URL:http://ted-movie.jp/
場所:新宿ミラノ2
今年のアカデミー賞授賞式の司会も務めたセス・マクファーレンは、アニメーターでもあり、コメディアンでもあり、俳優でもあり、監督兼脚本家でもありと、とても多才な人物なんだけど、その芸風が、お下劣、シニカル、セレブ芸能人いじりと、ちょっと日本人にはわかりづらいコメディ作品を作っている。なのにこの『テッド』はもう3ヶ月以上もロングランしている。なぜなんだろう? そんなに面白い映画なのか? と観てみたら、いやいや、予想通りの、お下劣、シニカル、セレブ芸能人いじりの映画だった。例えば、映画『フラッシュゴードン』をいじり倒している部分なんて誰が面白がってるんだろう? トム・スケリットをいじってるのも誰が笑うんだろう? 他にもビミョーなラインの有名人を大勢いじっている。ティファニーとかケイティ・ペリーとかベリンダ・カーライルとかブランドン・ラウスとかテイラー・ロートナーとか。案の定、誰もそんなところでは笑っていなかった。なのにヒットしている。不思議だ。
町山智浩が監修している字幕もきびしかった。日本人にわかるようにと「ガチャピン」とか「星一徹」とか「くまモン」に置き換えていたリと苦労が見えるけど、それがとても不自然でまったく笑えない。それだったら、そのまま固有名詞をカタカナ表記したほうが良かった。実際には、
「くまモンの方がいい!」→「テディ・ラクスピンの方がいい」
「ガチャピンよりすごいだろ」→「『パトカー・アダム30』みたいだろ」
「誰かが星一徹にならなきゃ」→「誰かがジョーン・クロフォードにならなきゃ」
らしい。(http://patrikeiji.blog37.fc2.com/blog-entry-450.htmlより)それにしてもジョーン・クロフォードが星一徹とは!
元ネタがわかれば笑える映画だとはおもうけど、元ネタがわからなくてもヒットしているってのが面白い。もしかすると日本語吹き替え版がヒットを牽引しているんだろうか。
→セス・マクファーレン→マーク・ウォールバーグ→アメリカ/2012→新宿ミラノ2→★★★









だから、この映画の中でヒッチコックを演じたアンソニー・ホプキンスよりも、アンソニー・パーキンスを演じたジェームズ・ダーシーのほうが、ジェームズ・ダーシーと云う役者を知らなかっただけに、これは凄い! まったくアンソニー・パーキンスにしか見えない、としかおもえなくて素晴らしかった。スカーレット・ヨハンソンのジャネット・リーは、これはまったく似てないので問題外。ジェシカ・ビールのヴェラ・マイルズは、これもジェシカ・ビールと云う女優を知らなかったので、まったく似てないけどまあまあ良かった。ヘレン・ミレンはただのおばさんにしか見えなかった。一度だけ、本当のヒッチとアルマの写真がクローズアップになるけど、アルマはもうちょっと可愛らしい感じじゃなかったのかなあ。
いや本当は、そんなところにゴタゴタと文句を云うよりも、一番面白かったのは父親役のロバート・デ・ニーロが、アメリカン・フットボールのフィラデルフィア・イーグルスの熱狂的なファン(66番ビル・バージェイのジャージなんて着ているのは筋金入りだ)なことだった。息子役のブラッドレイ・クーパーもその影響を受けて、デショーン・ジャクソンのレプリカ・ジャージを着ていたりしていた。この映画の原題の「Silver Linings Playbook」の「Silver」はイーグルスのチーム・カラー(鷲のマークがSilver)でもあって、「Silver Linings」の意味するところの「銀の裏地」とは、地区優勝はするもののなかなかスーパーボウルで優勝することのできないイーグルスのこととも掛けていたのではないかとおもう。「どんなに分厚い雲で覆われていてもその上には太陽が輝いている」と。原作本の初版の時のカバーは、このことをそのものずばりで現していた。そして映画の中では、父親と息子との結びつきにこのフィラデルフィア・イーグルスが使われているんだけど、どこか中途半端な感じは否めないので、原作本をしっかりと読んでみたい気がしてしまった。おそらくは、プロスポーツのチームを子供の頃から親子で応援していることの意味がもっと重要視されていて、ラストのイーグルスがダラス・カウボーイズに勝つことへのカタルシスがもっと半端ないことになっているんじゃないかと期待して。
