
監督:三宅唱
出演:シム・ウンギョン、河合優実、髙田万作、斉藤陽一郎、松浦慎一郎、足立智充、梅舟惟永、佐野史郎、堤真一
制作:映画『旅と日々』製作委員会/2025
URL:https://www.bitters.co.jp/tabitohibi/
場所:テアトル新宿
つげ義春の漫画は、アンソロジーが組まれた本などでしか読んだことがなくて、そこで受けた印象からもっと読みたいとおもうものの、漫画を読む習慣が失われて久しく、なかなか手が出ずにそのまま時間が過ぎてしまっている。つげ義春の作品を原作としている竹中直人の『無能の人』(1991)や山下敦弘の『リアリズムの宿』(2003)を観たときにも感じた、日本の原風景に見える叙情的な雰囲気は、合理性が支配する情報化社会の対極にも位置しているように感じられて、いまでこそ読んでみるべき漫画ではないかとおもってはいるもののまだ読み込んでないのがとても残念。
三宅唱監督の『旅と日々』は、韓国人の脚本家である李(シム・ウンギョン)が書いた脚本が映画化されるエピソードが前半で、李がふらりと訪れた雪深い山奥の宿「べんぞうや」でのやる気のない宿主べん造(堤真一)との交流が後半となっている。それぞれつげ義春の漫画「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」の2作品を原作としている。
ホテルの予約もせずにおもいつくまま旅をするのは楽しそうに見えるものの、もし野宿でもせざるを得ない状況に追い込まれたことを考えたら、とてもじゃないけれどそこまでの勇気は出ない。のに、韓国人の李(シム・ウンギョン)が、不馴れな土地である日本の冬の山村でそれをトライして、普通のパック旅行では得られない想像もつかないような体験が得られるのは、やっぱり、あこがれてしまう。でも、もし自分がホテルの予約もせずに韓国の田舎を旅することを考えたら、いやいや、たとえ日本の田舎だとしても、とてもそれを行う勇気がまったく見えない。
脚本家の李を演じたシム・ウンギョンは、中学校の頃に観た岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』(2001)や是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004)で日本の映画に興味を持つようになって、「いつか日本で仕事ができたらいいな」と云う夢を持ったと云う。
https://www.cinra.net/article/interview-201905-shimbunkisha
まるでポツンと日本の田舎に放り込まれた脚本家の李のように、日本の芸能界に飛び込んだシム・ウンギョン。『新聞記者』(2019)を観たときは、そこまで日本での活動を増やすとはおもいもしなかった。その勇気に脱帽するとともに、日本での活動を応援したいと『旅と日々』を観ておもいはじめた。
→三宅唱→シム・ウンギョン→映画『旅と日々』製作委員会/2025→テアトル新宿→★★★☆