
監督:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディードル・オコンネル、マイケル・ウォード、アメリ・ホーファーレ、クリフトン・コリンズ・Jr.、ウィリアム・ベルー
原題:Eddington
制作:アメリカ/2025
URL:https://a24jp.com/films/eddington/
場所:MOVIXさいたま
『エディントンへようこそ』の予告編を観たとき、コロナ禍でのマスクを付ける付けないで巻き起こる住民同士のトラブルを面白おかしく描いている映画に見えた。えっ、アリ・アスターがコメディを撮ったの? そうだよなあ、彼も新境地を切り開かないと、と変に納得してしまった。
実際に映画を観てみると、な、わけがなかった。何なんだ、あの予告編。ミスリードと云うか、サムネ詐欺すぎる。やっぱり今までのアリ・アスターの映画らしく狂った映画だった。
映画の舞台はコロナ禍真っ最中の2020年、アメリカ・ニューメキシコ州の小さな町エディントン。町の保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)は喘息持ちだから息苦しくなるマスクを付けたくない。マスク着用を強いる市長テッド(ペドロ・パスカル)と対立し、突如としてジョーは市長選に立候補する。精神的に弱いジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)、陰謀論者のその母ドーン(ディードル・オコンネル)、カルト集団の教祖ヴァーノン(オースティン・バトラー)などを巻き込んで、事態はとんでもない状況へと展開して行く。
今から振り返って見れば、コロナウィルスによるパンデミックが起こったことによって、我々の生活を取り巻く環境が大きく変化してしまった。それは病気に関する衛生面のことだけではなくて、社会的な側面も大きく変容してしまった。陰謀論も含むさまざまな情報の氾濫が人々の生活を大きく左右し、差別やハラスメントに対して極端に敏感になることによって暮らし向きは窮屈となり、単純な正義なんてもうこの世にはなく、もちろん単純な悪もない。誰もが混沌としたまだら模様の中で生きて行かざるを得なくなってしまった。
アリ・アスターの『エディントンへようこそ』はまさにそのことを映像化しようとしていた。そしてホアキン・フェニックスは『ジョーカー』(2019)のアーサー・フレック(ジョーカー)と同じように、まさに現代のトリックスターである保安官ジョーを演じていた。だから、予告編からイメージしたようなコメディ映画ではなかったけれど、この住みづらい世の中を風刺したブラックなコメディ映画ではあった。で、面白かったか? と聞かれたとしたら、うーん、面白くはない、と答えるけれど。
→アリ・アスター→ホアキン・フェニックス→アメリカ/2025→MOVIXさいたま→★★★