監督:ポール・シュレイダーhttp://www.transformer.co.jp/m/tamashii_film/ 
ポール・シュレイダー監督の『魂のゆくえ』を観て、やはりポール・シュレイダーが脚本を書いた『タクシードライバー』をすぐに連想した。と同時にベルイマンの『冬の光』も頭に浮かんだ。でも、それだけではイーサン・ホークが演じているトラー牧師の行動の整合性を導き出すことはちょっと無理だった。
ストーリーを追うだけではなかなか内容を理解できない映画の場合、まずは表面的に見えるものを列挙してみる。
・トラー牧師にはなんらかの重篤な病気の兆候が見えるが、積極的に病院へ行って検査をしようとする気持ちがない。
●トラー牧師は自分の罪をつぐなうべく観光客向けの小さな教会での職をまっとうしようと務めているが、まだ自分が贖罪されていると感じ取ることができないでいる。
・教会で知り合ったアマンダ・サイフリッドが演じるメアリーから、極端な環境保護論者である夫に会ってくれとの依頼を受ける。その夫は人間による地球の環境破壊に絶望して鬱になっている。
●トラー牧師はメアリーの夫からの悲痛な訴えをキリスト教の教えによって解決しようと試みるが失敗する。夫はショットガンで自殺してしまう。現実の問題をなんでも可視化できてしまういまの情報化社会での既存宗教の無力を痛感する。
・トラー牧師の教会は地元の大きな教会の援助を受けていて、その大きな教会は企業からの献金で成り立っている。
●トラー牧師は、複雑な現代社会の構造の中で、宗教人としてまっとうな努めを果たそうとしている牧師としての自分の立ち位置に矛盾を感じてしまう。
・教会で事務を務めるヴィクトリア・ヒルが演じるエスターからの好意を激しい感情を露わにして拒否してしまう。
●トラー牧師は、おそらくこの時点に至って、プロテスタント教会の牧師としての職分を放棄して、自分の中に独自の神を見出す。
と、映画を観た感想をまてめてみても、最後のトラー牧師の過激な行為をなかなか理解することができない。でもそこは理詰めで理解するよりも、もしかしたら感覚的に理解するだけで良いのかもしれない。トラーが牧師を放棄して還俗したのなら、最後にメアリーと肉体的に一体化したことで何かしらの昇華が達成したと考えるだけで良いのかもしれない。
いろいろと解釈の難しい映画だったけれど、正面から捉えるショットが多いことなどからも、まっすぐに人間を描こうとする姿勢が見えて、ベルイマンなどの映画と同様にこんな部類の映画は案外好き。
→ポール・シュレイダー→イーサン・ホーク→アメリカ/2017→Movixさいたま→★★★★