監督:今井友樹
出演:岡田靖雄、橋本明、齋藤正彦、呉忠士、呉秀男、原田憲一、川村邦光
制作:日本精神衛生会、きょうされん/2017
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場所:UPLINK

鳥の道を越えて』を撮った今井友樹監督の作品を『坂網猟 -人と自然の付き合い方を考える-』に続けて観る。今度は日本の精神医学・精神医療の草分けといわれる呉秀三のドキュメンタリー。

呉秀三は1918年に「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」のレポートを発表し、この中で「わが国十何万の精神病者はこの病を受けたるの不幸の他にこの国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」と書き、多くの精神障害者が自宅の座敷牢に幽閉されている状況を改善すべく精神病院開設に奔走した。今井友樹監督の『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』はその呉秀三の足跡を追ってオーストリア、ドイツにまで飛ぶ。

この呉秀三を追いかけた丁寧な映画を見て、精神障害者の人権を守ろうと奔走した先駆者としての苦労を偲ばずにはいられないけど、でも、この映画の中で一番目を引いてしまったのは呉秀三の業績のことよりも「私宅監置」と言う強烈な文字だった。つまり、いわゆる「座敷牢」のことだった。日本での「座敷牢」の歴史がどのようなものだったのかとても興味を持ってしまった。ああ、出来ることなら、そこに突っ込んで欲しかったけど、そんなところにスポットライトを当ててしまうと相当エグい映画になってしまうだろうなあ。

大阪府寝屋川市で精神疾患の娘を15年もプレハブに監禁していた事件や今年の幼児虐待のニュースを見てもわかるとおり、日本の家族と云う枠組みの中に外部が入り込めない閉鎖性は異常だとおもう。呉秀三が明らかにした日本での「座敷牢」の暗黒史をもっと周知させるためにもそのようなドキュメンタリーが見てみたい。

→今井友樹→岡田靖雄→日本精神衛生会、きょうされん/2017→UPLINK→★★★☆