監督:今井友樹
出演:
制作:株式会社工房ギャレット/2018
URL:
場所:東京しごとセンター地下講堂

第88回キネマ旬報ベストテン「文化映画第1位」に選ばれた『鳥の道を越えて』を撮った今井友樹監督の新作。

『鳥の道を越えて』は今井監督のふるさとの岐阜県東白川村で小さい頃に祖父から聞かされた「鳥の道」を探し求めて旅に出るドキュメンタリーだった。この映画の中で東白川村で行われていた鳥を捕獲する猟のひとつ「カスミ網猟」が紹介されていて、同時に日本全国に存在する独特の猟法を紹介する流れで石川県加賀市片野鴨池で行われている「坂網猟」も紹介されていた。その縁から加賀市片野町の坂網猟保存会から依頼されて『坂網猟 -人と自然の付き合い方を考える-』を撮ることになったそうだ。

「坂網猟」とは、夕暮れ時に鴨が池から一斉に飛び立つ習性を利用して、その瞬間に坂網と呼ばれるY字形の網を投げ上げて捕獲する猟法で、今でも26人の坂網猟師がいるそうだ。坂網の中に鴨がきれいに飛び込む瞬間が、まるでフライフィッシングで鱒が釣れるがごとく、技とタイミングが重要なとてもむずかしい猟法だからこそ達成感あふれるもので、映画の中での捕獲時のスローモーション映像もとても気持ちの良いものだった。

今回観た『坂網猟 -人と自然の付き合い方を考える-』は普及編の42分バージョンで、おもに地理的状況の説明や坂網猟師へのインタビュー、捕獲シーンに費やされている。でも、それだけで終わってしまうので、うん? 捕った鴨はどうするんだろう? の疑問がすぐに湧いた。上映後の監督とのトークでもすぐにそのことが話題となった。その時のトークによると、この映画には伝承編として145分のバージョンもあって、そこでは捕った鴨をどのように食して行くのかも描かれていると云う。ああ、だったら、そっちも観たいなあ、の感想がすぐに湧く。短いバージョンを作ることにはいろんな事情があるんだろうけど、ドキュメンタリーと云えば長尺の中に身を置く習性がついてしまっているので、短いバージョンでは物足りなくなっているのかなあ。

→今井友樹→→株式会社工房ギャレット/2018→東京しごとセンター地下講堂→★★★

監督:クレイグ・ガレスピー
出演:マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャニー、マッケナ・グレイス、ポール・ウォルター・ハウザー、ジュリアンヌ・ニコルソン、ケイトリン・カーヴァー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ボビー・カナヴェイル
原題:I, Tonya
制作:アメリカ/2017
URL:http://tonya-movie.jp
場所:TOHOシネマズシャンテ

1994年1月6日、リレハンメルオリンピックの選考会となるフィギュアスケート全米選手権の会場で、トーニャ・ハーディングがライバルであるナンシー・ケリガンの膝を殴打して試合に出られないようにした事件は日本でも大きく報道されて、まるでスポ根マンガを地で行ったような幼稚で、扇情的で、馬鹿げた騒動はワイドショーの格好のネタだった。

当時の「ひょうきん族」だったかなあ、事件全体を簡略化してコントにしていたので、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を観るまではてっきりトーニャ・ハーディングがオリンピック代表になりたいがためにナンシー・ケリガンへの暴行事件に直接及んだものだと間違って認識してしまっていた。正確にはトーニャ・ハーディングの元夫ジェフ・ギルーリーが友人のショーン・エッカートに暴行を依頼した事件で、この映画のストーリーではさらにその部分もグレーに描かれていて、どちらかと云えば誇大妄想狂の元夫の友人が勝手に忖度して犯行に及んだ事件に見えるようにも作られていた。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の中でのトーニャ・ハーディングは、不運にも事件に巻き込まれてしまいました、のポジションにいるのに、そこに感情を移入して彼女へ同情を寄せる映画にはなっていなかった。クレイグ・ガレスピー監督は、強烈な性格の母親にパワーハラスメントを受けながらフィギュアスケートばかりをやらされて、おそらくは充分な教育も受けられずに、人との良好な関係を構築するすべも学べずに、はすっぱな女に育ってしまった彼女に対して哀れみを感じさせる部分を見せながら、と同時に、尊大な母親に育てられたからこそ、まるでそのコピー品のようになってしまった彼女を面白おかしくも描いている。さらに同時に、アメリカ人女性としてはじめてトリプルアクセルを飛んだフィギュアスケートの才能を称賛する部分も忘れずに抑えていて(フィギュアスケートのVFXシーンが素晴らしい!)、この多層構造でもってナンシー・ケリガン暴行事件がワイドショーレベルで理解できるような単純なシロモノではないことを証明していた。

この映画は、トーニャ・ハーディングがどれだけこの事件に関与したのか、その真相を追い求めたものではないところがとても良かった。そもそも多くの人間の関わった事件なんて、誰もが納得できるような真相があるとしたら、それは絶対にあとからこじつけられたものだとおもう。だからこそ、もし有名な事件を映画化するとしたら、このような多層構造の描き方しか正解は無いのかもしれない。どんなものだって真相なんて結局は藪の中だ。

→クレイグ・ガレスピー→マーゴット・ロビー→アメリカ/2017→TOHOシネマズシャンテ→★★★★

監督:スティーヴン・S・デナイト
出演:ジョン・ボイエガ、スコット・イーストウッド、ジン・ティエン、ケイリー・スピーニー、菊地凛子、バーン・ゴーマン
アドリア・アルホナ、マックス・チャン、チャーリー・デイ
原題:Pacific Rim: Uprising
制作:アメリカ/2018
URL:http://pacificrim.jp
場所:109シネマズ木場

ギレルモ・デル・トロの撮った『パシフィック・リム』は、彼が日本の怪獣映画やロボットアニメが大好きなことから実現した映画で、その続編をギレルモ・デル・トロが撮らないとなると、基本となる日本のポップカルチャーへのリスペクトがしっかりと継承されているんだろうかと不安だったけれど、いやいや、今回のスティーヴン・S・デナイト監督も大したものだった。

「少年時代より「ウルトラマン」や「ジャイアントロボ」などの日本の特撮テレビを観て育った」(https://www.cinematoday.jp/news/N0097309)と云うスティーヴン・S・デナイト監督は、今回の映画のクライマックスに東京での昼間の市街戦を持ってきた。青空の下での格闘で次々とビルがなぎ倒されるシーンを観れば、ああ、これは「ウルトラマン」だ! と嬉しくなってしまった。前回の『パシフィック・リム』では夜のシーンが多くて、日本の特撮を倣うなら真っ昼間の闘いだろう、と不満だったけど、その部分については今回は大満足。

ただ、そのような派手な格闘シーンのわりには、登場するキャラクターが直情的な性格の人間ばかりで、前作よりもストーリーが直線的で深みがなくて、全体的にギレルモ・デル・トロ版よりさらに「お子様ランチ」感が増大していた。まあ、最初から「お子様ランチ」を楽しむんだ! と食べれば、美味しいんだけどね。

→スティーヴン・S・デナイト→ジョン・ボイエガ→アメリカ/2018→109シネマズ木場→★★★

監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、スティーブン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ、ベン・メンデルソーン、ニコラス・ジョーンズ、サミュエル・ウェスト、デビッド・バンバー
原題:Darkest Hour
制作:イギリス/2017
URL:http://www.churchill-movie.jp
場所:角川シネマ新宿

誰もが知っている歴史的な著名人にどのような功績があったのかはびっくりするほど知らない。日本史でもそうなんだから世界史ならなおさらだ。ウィンストン・チャーチルもそうだった。日本人がチャーチルの名前を聞いた時に真っ先におもい浮かべるのは葉巻をくわえた太ったおっさんの写真くらいで、イギリスの首相として第二次世界大戦中にどんなことをしたのかなんてまったく知りもしない。

ジョー・ライト監督の『ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男』を観て、第二次世界大戦の序盤でのイギリスの窮地が驚くほどギリギリだったことにはびっくりした。昨年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』で描かれた「ダイナモ作戦」での戦況は、それを失敗すればヒットラーにひれ伏さざるをえない微妙な状況だったのだ。

そこを救ったのがチャーチルだった。同じ保守党内での人気はまったく無く、馬鹿だ、変人だ、って云われて続けていた男が、戦時の挙国一致内閣を作る条件として野党の労働党が推したために首相にこそなったが、元首相のチェンバレンやハリファックス外相をコントロールするのは難しく、彼らが主張するナチスドイツとの和平交渉(をすればナチスの傀儡政権になる可能性大)をせざるを得ない状況に追い込まれていた。が、そこをガラリと一変させたのがチャーチルの「言葉」だった。日本での状況を見てもわかる通り、政治家の発する「言葉」は普通の人間の発する「言葉」よりもとても重く、選ぶひとつひとつの「言葉」が大きな意味を持ってしまう。特に戦時のような特殊な状況下で発する「言葉」はさらに人心掌握をする力があって、それは平凡な政治家ではとても出来ない芸当だった。

ジョー・ライト監督は、この、近代史の中でもとても重要な時期を切り出して、映像テクニックを駆使して上手く描いていた。ゲイリー・オールドマンもその憎まれっ子のウィンストン・チャーチルを巧く演じていた。

が、これだけ特殊メイクが話題になると、どうしてもそこに目が行ってしまうのが辛かった。無名の役者で、特殊メイクが話題にものぼらずに、観たあとから、えっ!マジ! って気が付くのが理想なんだろうけどなあ。

→ジョー・ライト→ゲイリー・オールドマン→イギリス/2017→角川シネマ新宿→★★★★

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
出演:ロバート・ダウニー・Jr、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ドン・チードル、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、ポール・ベタニー、エリザベス・オルセン、アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、ダナイ・グリラ、レティーシャ・ライト、デイヴ・バウティスタ、ゾーイ・サルダナ、ジョシュ・ブローリン、クリス・プラット
原題:Avengers: Infinity War
制作:アメリカ/2018
URL:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/
場所:109シネマズ菖蒲

昨年に公開された『マイティ・ソー バトルロイヤル』のラストシーンからの流れで、ついにサノスのインフィニティ・ストーン集めのストーリーへと突入。それを引き継いだのが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』だった。

まずは、現在の各インフィニティ・ストーンの在り処。

●スペース・ストーン(青色のインフィニティ・ストーン、「四次元キューブ」に収められてる):アスガルドにあるオーディンの金庫に保管されていたけどロキが回収? おそらくアスガルドの移民船内にある。
●マインド・ストーン(黄色のインフィニティ・ストーン):最初は「ロキ」の杖に、現在は「ヴィジョン」の額(ひたい)に。
●リアリティ・ストーン(赤色のインフィニティ・ストーン):コレクターの保管庫にあったが爆発により所在不明。
●パワー・ストーン(紫色のインフィニティ・ストーン):ザンダー星にて保管中。
●タイム・ストーン(緑色のインフィニティ・ストーン):ネパールの首都カトマンズにあるカマー・タージにて保管中。
●ソウル・ストーン(橙色のインフィニティ・ストーン):所在不明。

この中の、まずはアスガルドの移民船に乗っているロキの手中にあった「スペース・ストーン」がサノスによって奪われるシーンから始まる。ソーも瀕死の状態になるし、アベンジャーズの中でも最強とおもわれていたハルクもまるで赤子の手をひねるようにこてんぱんにやっつけられる。

サノスの絶大な強さを引き立たせるこのオープニングが、なんと云っても素晴らしかった。いわゆる「つかみはOK」で、すっかりと映画の世界に引き込まれる。

そして、いつの間にかに「パワー・ストーン」はサノスの手中に落ちていて(と云うことはザンダー星は…)、結局はコレクターがそのまま持っていた「リアリティ・ストーン」も簡単に奪われてしまう。となると残りはドクター・ストレンジの持つ「タイム・ストーン」とヴィジョンの額にある「マインド・ストーン」と所在不明の「ソウル・ストーン」のみとなった。

と、こんな感じで、ひとつひとつのインフィニティ・ストーンがサノスの左手にあるガントレットにはめ込まれてい行く過程が、まるでゲームのクエストをクリアしていくがごとく、悪役ではあるんだけどその達成感に同調できてしまうストーリーの運びが巧かった。「アベンジャーズ」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の各キャラクターの活躍配分も申し分ないし、観ていて楽しくてしょうがなかった。109シネマズ菖蒲と云う田舎のシネコンでは2D上映は日本語吹き替え版しかなかったので、もう一度、今度は字幕版で観直したい!

→アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ→ロバート・ダウニー・Jr→アメリカ/2018→109シネマズ菖蒲→★★★★

監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、スティーヴン・ルート、キース・スタンフィールド、キャサリン・キーナー
原題:Get Out
制作:アメリカ/2017
URL:http://getout.jp
場所:ギンレイホール

今年のアカデミー賞で脚本賞を獲ったジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』はいつ公開されんだろう? なんて悠長なこと云っていたら、なんと、すでに公開済みだった! まあ、新人監督の撮ったオカルト、ホラー系の映画はよっぽどの話題にならない限り見逃しちゃうなあ。

『ゲット・アウト』についてはアカデミー賞の授賞式で得た情報からすると「ホラー系」だったので、ちょっとそっち系のショック演出に備えて観ていたら、「ホラー系」と云うよりもキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』(この映画の中でも言及があった)とかポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』のような「秘密結社」系タイプの映画だった。

ただ、それが「家族」や「親族」と云う枠組みの中で行われているので、ちょっとトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』も連想できて、最後に「じいちゃん、やるんだ!」のセリフが出てきた時には、まさに『悪魔のいけにえ』じゃん! と笑ってしまった。

この映画で一番怖かったのは黒人メイドの顔だなあ。あの、意味ありげの微笑み(その意味がストーリーが進むうちにだんだんとわかって来る)は、今おもい出してもゾクゾクする。ベティ・ガブリエルと云う女優だそうだ。絶対にアカデミー賞の助演女優賞を獲るべきだった。

→ジョーダン・ピール→ダニエル・カルーヤ→アメリカ/2017→ギンレイホール→★★★☆

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、マーク・ライランス、リナ・ウェイス、森崎ウィン、フィリップ・ツァオ、ベン・メンデルソーン、T・J・ミラー、サイモン・ペグ
原題:Ready Player One
制作:アメリカ/2018
URL:http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/
場所:109シネマズ木場

スティーヴン・スピルバーグが監督した作品は、日本では今年になって『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』が公開されたばかりなのに、続けざまに次回作の『レディ・プレイヤー1』が公開となった。まったく違うタイプの映画をこうも簡単に連発できる職人監督って、やっぱり素晴らしい!

『レディ・プレイヤー1』は「ゲーム」と「映画」が好きな人間にとってはたまらない映画だった。クエストを解く鍵がキューブリックの『シャイニング』だなんて、ああ、そんな「ゲーム」が欲しかった。『レディ・プレイヤー1』のゲーム版も欲しいなあ。Nintendo Switchあたりで出して欲しいよ。まあ、映画のゲーム化だなんてクソゲーが出来そうだけど。

それに、ところどころに映画の話題が出てくるところも楽しい。ジョン・ヒューズの作品とか、『ビルとテッドの大冒険』とか、『バカルー・バンザイ』とか、『メリーに首ったけ』とか。もちろん、『AKIRA』の金田のバイクやガンダム(微妙にガンダム世代ではないけど)にも大興奮! でも、この手のVR(仮想現実)やAR(拡張現実)をテーマにしたストーリーのお決まりのセリフでもある「リアルも大切」が出てきて一気に冷めてしまった。そういう決まったパターンは、いくらなんでも、もう、いらない。

→スティーヴン・スピルバーグ→タイ・シェリダン→アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★☆

監督:リー・アンクリッチ
声:石橋陽彩、藤木直人、橋本さとし、松雪泰子、磯辺万沙子、横山だいすけ、多田野曜平、佐々木睦
原題:Coco
制作:アメリカ/2017
URL:https://www.disney.co.jp/movie/remember-me.html
場所:109シネマズ木場

今年になって『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』『ブラックパンサー』と公開されて、これらすべてが昨今の大きなトピックとなっている弱者や少数者へのヘイトやハラスメントの問題を隠喩している映画としかおもえなくて、その流れからするとメキシコを舞台にした『リメンバー・ミー』も同列に位置する映画だった。

メキシコの人々の生活に根ざしている死生観が反映されたストーリーはとても新鮮だった。特にメインにフィーチャーされるメキシコの祝祭日「死者の日」は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『ボーダーライン』を観た流れから読んだヨアン・グリロ著、山本昭代訳の「メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱」の中でも、埼玉近代美術館で観た「ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに」の絵の中でも、骸骨をメインビジュアルとしたおどろおどろしさだけが際立っていて、とても明るいイメージは持てなかったのだけれど、その実は先祖を敬い家族を大切にすることが謳われる盛大なお祭りでもあり、「死」を恐れるのではなくて、逆に笑い飛ばしてしまおうとするラテン系のノリの明るく楽しい祭りであったことも驚きだった。

この映画の中に、まるで小野不由美の「十二国記」の騎獣のような聖獣アレブリヘが出て来る。これがまるでフリーダ・カーロの絵のようにド派手でかっこよかった。実際にアレブリヘはメキシコを代表する民芸品で空想上の動物の木彫りのことだそうだ。

オアハカ・アラソラ村の「アレブリヘ」のおすすめ職人4選

うーん、これはちょっと欲しくなってしまった。どこかで手に入らないかな。

→リー・アンクリッチ→(声)石橋陽彩→アメリカ/2017→109シネマズ木場→★★★☆


監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス、キャリー・クーン、 アリソン・ブリー、ジェシー・プレモンス、デヴィッド・クロス、パット・ヒーリー、マイケル・スタールバーグ、スターク・サンズ
原題:The Post
制作:アメリカ/2017
URL:http://pentagonpapers-movie.jp
場所:109シネマズ菖蒲

アメリカ国防省が早い段階で「ベトナム戦争は勝てない」と判断しておきながら、今まで戦争に負けたことがないメンツから、ベトナムから軍を引き上げることを躊躇してしまったことは今となっては公然の事実となっていて、そのような「アメリカ政治の恥部」とも云える事実がどのような経緯で世間一般に暴露されてしまったのかはあまり注意を持って調べようともしてなかった。

スティーヴン・スピルバーグ監督は『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』で、国防省が「ベトナム戦争は勝てない」との調査をまとめた報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」がワシントン・ポスト紙上で暴露されるまでの経緯を、ちょっとヒロイックな描写が強いけど、丁寧に、緊張感を持って描いていた。昔から、アラン・J・パクラ監督の『大統領の陰謀』とか、シドニー・ルメット監督の『ネットワーク』のような、社会派と云われる映画が大好きなので、この映画もご多分に漏れず一気に集中して観てしまった。いやあ、面白かった。

まあ、日本のいまの状況で『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を観れば森友学園や加計学園に関する問題とオーバーラップさせてしまうのは間違いないんだけど、内部から暴露する人間が現れる土壌と云うものが、義理や人情が重んじられる日本では、まだまだ、なんだろうなあ。自殺するくらいならメディアと協力して暴露すればいいのに。それに、行政と司法がはっきりと分立しているのかと云えば、それもちょっと疑問だし。なんだかんだと云われながら、その点においては日本よりアメリカのほうがマシだ。

→スティーヴン・スピルバーグ→メリル・ストリープ→アメリカ/2017→109シネマズ菖蒲→★★★★

監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ルイ・トランティニャン、マチュー・カソビッツ、ファンティーヌ・アルドゥアン、フランツ・ロゴフスキ、ローラ・ファーリンデン、トビー・ジョーンズ、ハッサム・ガンシー、ナビア・アッカリ
原題:Happy End
制作:フランス、ドイツ、オーストリア/2017
URL:http://longride.jp/happyend/
場所:新宿武蔵野館

ミヒャエル・ハネケの映画のタイトルに「ハッピー」なんて単語が使われていると、ハネケがいったいどんな「ハッピー」な映画を作るんだろうかと、いや、誰もが普通に考える「ハッピー」な映画を作るわけがない、とその内容を楽しみにしながら観に行った。

そうしたら、ほーら、やっぱりハネケの映画だった。登場人物たちがことごとく「ハッピー」な状態にはいないし、最後に「ハッピーエンド」が訪れるわけでもなかった。じゃあ、この映画のどこが「ハッピーエンド」なのかと考えてみると、このイヤな世の中からおさらばできることこそが「ハッピー」であると云っているとしかおもえない。ハネケは今回の映画のプロモーションの中のインタビューで、この映画の中にSNSを象徴的に使っていることからそのことに触れて、

日常を過ごすなかで、他者に対する共感や敬意がどんどん失われていると感じます。消費社会が蔓延し、利己主義的になっています。こうした変化は今に始まったことではなくて、ニーチェが「神は死んだ」と言った時から起こっていることかもしれません。
https://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/happy-end-2018-0227_a_23371764/

と語っている。

そうなんだよなあ。たとえどんなに悪人であってさえも敬意は必要で、見せかけの正義だけで相手を罵倒して良いとはかぎらない。イヤな世の中だ。はやくこんな世の中から「ハッピーエンド」を迎えたい。

→ミヒャエル・ハネケ→イザベル・ユペール→フランス、ドイツ、オーストリア/2017→新宿武蔵野館→★★★★