
監督:ホン・サンス
出演:イザベル・ユペール、イ・ヘヨン、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク、キム・スンユン
原題:여행자의 필요(英題:A Traveler’s)
制作:韓国/2024
URL:https://mimosafilms.com/gekkan-hongsangsoo/
場所:OttO
ホン・サンスが次から次へと立て続けに映画を撮るので、すぐに公開作が溜まってしまう。それをちまちまと公開していても集客させるのが大変なので、配給元のミモザフィルムは考えて、ホン・サンスの監督デビュー30周年もかねて「月刊ホン・サンス」を企画してきた。それを渋谷のユーロスペースへ観に行こうとしたら、大宮のミニシアターOttOでも上映すると云うので2月まで待った。
「月刊ホン・サンス」の新作1本目は2024年に撮った『旅人の必需品』。フランスの女優イザベル・ユペールとの3度目のコラボレーションの映画。
今回のイザベル・ユペールは韓国のソウルでフランス語の個人レッスンをしているイリスと云う女性を演じている。教え方が独特で、テキストをいっさい使わない。対面で会話を交わしながら質問を投げかけて、その時々の相手の気持ちをフランス語の文章にして暗記カードにまとめる。それを何度も読ませて言語を習得させる方法を取っている。
まず最初の生徒は若い女性(キム・スンユン)。彼女の家で会話を交わしているうちに、彼女は突然ピアノを弾き始める。イリスはその演奏のクオリティについて彼女に質問する。最終的に「心の奥底では何を思ったのか」とまで追求する。次の生徒は会社を経営しているらしき女性(イ・ヘヨン)。彼女の夫(クォン・ヘヒョ)と一緒に会話を交わす。すると彼女はギターを弾き始める。イリスはその演奏のクオリティについて最初の生徒とまったく同じ質問をする。
この二人の生徒への質問、そして生徒の返答がまるっきり同じだった。これはいったい何なのか? と考えた時に、音楽や詩のリフレインと同じことなのではないか? とおもい当たった。二人の生徒が楽器を演奏することや、イリスが下手なリコーダーを吹くシーンがあること。そして、韓国の有名な詩人である尹東柱(ユン・ドンジュ)の詩が出てくることなどから、今回のホン・サンスは映画全体の構成を一つの楽曲に例えているんじゃないかとおもってしまった。
この前半のAメロ(と云うのか、何と云うのか)を終えて、イリスに若い韓国人のボーイフレンドがいることがわかって、ふたりが暮らしている部屋にボーイフレンドの母親が訪ねてくることで楽調はサビのように一気に盛り上がる。でも、前半のリフレインが後半のサビの部分にどうのように影響しているのかはよくわからなかった。それにタイトルでもある「旅人の必需品」がいったい何を意味するのか明確なものが見えてくるわけでもないので、なんとなくぼんやりと映画を観終えてしまった。とは云っても、ホン・サンスの映画は会話の妙を楽しむものなので、それでも面白く観てしまった。
「月刊ホン・サンス」の次の作品は『小川のほとりで』(2024)らしい。もちろんOttOへ観に行く。
→ホン・サンス→イザベル・ユペール→韓国/2024→OttO→★★★★