監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:オースティン・バトラー、レジーナ・キング、ゾーイ・クラヴィッツ、マット・スミス、リーヴ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオ、ニキータ・ククシキン、ユーリー・コロコリニコフ、ベニート・マルティネス・オカシオ、グリフィン・ダン、ローラ・ダーン
原題:Caught Stealing
制作:アメリカ/2025
URL:https://caught-stealing.jp
場所:MOVIXさいたま

『ブラック・スワン』『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキーの新作は、1998年のニューヨークを舞台にしたクライム・アクションだった。

ロウアー・イースト・サイドの「Paul’s Bar」でバーテンダーとして働くハンク(オースティン・バトラー)は大のサンフランシスコ・ジャイアンツのファン。最初、ニューヨークが舞台で「ジャイアンツ」としか云わないので、てっきりアメリカン・フットボールのニューヨーク・ジャイアンツのことかとおもってしまった。次第にそれがサンフランシスコ・ジャイアンツであることがわかってきて、ハンクがカリフォルニア州パターソンの出身で、メジャーリーグのドラフトにかかる寸前まで行った選手であることもわかってくる。ところが交通事故で野球のできなくなる体になってしまったために将来の目標を失って、そして事故のトラウマをかかえたままニューヨークで働いている。そこへ、病気の父親に会いにロンドンへ行ってしまった隣人ラス(マット・スミス)の関係で、凶暴なロシア人の二人組がやって来て半殺しにされてしまう。超正統派のユダヤ人の二人組にも追いかけ回され、恋人のイヴォンヌ(ゾーイ・クラビッツ)も殺されて、頼りにした女刑事ローマン(レジーナ・キング)も何やら怪しくて……。

原題の「Caught Stealing」は「盗塁失敗」を意味する野球用語だそうだ。絶えずサンフランシスコ・ジャイアンツの試合結果を気にしているハンクが主人公のこの映画は、つまり題名からしてベースボールをモチーフにしていることがわかる。ところが、それがとても中途半端だった。もっと野球に関わる道具を小道具として使ったら良かったんじゃないか。盗塁やホームラン、ボークとか隠し玉とか、なんでも良い、もっともっとベースボールに関わることをストーリーに盛り込んで欲しかった。

映画のラスト、南国に逃れたハンクは食堂のテレビで、当時のサンフランシスコ・ジャイアンツの4番バッターで、2001年にシーズン73本塁打の記録を作るバリー・ボンズの打席を見る。さあ、打てるのか? の、以前のハンクならば見逃しそうもない絶好の場面でテレビのスイッチは切られ、彼のトラウマが解放されたような暗喩で映画は終わる。そうそう、こういうのがもっと欲しかった。

ラストクレジットで「Paul’s Bar」を経営するポールがグリフィン・ダンだったことがわかる。すっかり歳を取ってしまったので、まったく気が付かなかった。となると、どうしてもマーティン・スコセッシの『アフター・アワーズ』をおもいだす。おそらくこの巻き込まれ型の映画は『アフター・アワーズ』を意識して作っている。それに、街なかを歩くハンクのトラッキングショットの背景に「キムズビデオ」もちらりと!

→ダーレン・アロノフスキー→オースティン・バトラー→アメリカ/2025→MOVIXさいたま→★★★☆