30年くらい前のことだったとおもう。駅のホームで、記憶の限りでは赤羽駅、電車を待っているときにふとホームの屋根を支える白くて太い支柱を見たら「ソフィア・ローレンひまわり」と縦書きで落書きがしてあった。おもわず笑ってしまった。誰がこんないたずら書きをするんだろう? それもマニアックな映画ファンでないかぎり見ないような映画の題名と主演女優の名前だけを書くなんて。いや、ヴィットリオ・デ・シーカ監督による1970年公開の映画『ひまわり』はとても有名なので、ある程度年齢を重ねた人であれば知っている可能性は高い。でも、中年と呼ばれる年代になっている人、もしくはそれ以上の人がホームの支柱にいたずら書きをするだろうか。いたずら書きをするのは若い人の特権だ。分別をわきまえてしまうほど、悲しいかな、いたずら書きはしなくなる。となると、その若い人が「ソフィア・ローレンひまわり」といたずら書きするモチベーションはなんだろう? たまたまDVDレンタルで見た『ひまわり』に感動したんだろうか。あまりに感動したので、みんな見ろよ、と落書きをしたくなったのか。いまで云えば、推しの良さをみんなに知ってもらいたかったのか。SNSが普及する以前のささやかな推しのアピールの場が落書きだった。

最近、Xで「ソフィア・ローレンひまわり」と検索してみた。おお、出てくる、出てくる。どうやら、ABEMAプレミアムで見られるらしい。はじめて見て感動した人がポストしている。年齢はわからないが、これだけ多くのポストがあれば、その中には若い人も含まれているだろう。SNSは自分の気に入ったものをアピールするのには良いツールだ。30年前に比べれば誰もが「ソフィア・ローレンひまわり」とポストできる。ところが、それに対してディスることも簡単になった。「ソフィア・ローレンひまわり」をディスることはあまり考えられないが、ソフィア・ローレンの容姿をディスることは簡単だ。でも、そんなやつにはこうリプライしてやる。「人生は祭りじゃないか、一緒に楽しもう!」。