メイトワン 1920

監督:ジョン・セイルズ
出演:クリス・クーパー、ウィル・オールドハム、ジェイス・アレクサンダー、ケン・ジェンキンス、ボブ・ガントン、ケヴィン・タイ、ゴードン・クラップ、メアリー・マクドネル、ナンシー・メット、デヴィッド・ストラザーン、ジョシュ・モステル、ジェームズ・アール・ジョーンズ
原題:Matewan
制作:アメリカ/1987
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場所:フィルムセンター

第29回東京国際映画祭の一環のイベントとして、UCLAが復元を行っている作品の特集上映が日本ではじめてフィルムセンターで行われた。その中にはいろいろと観たい映画がいっぱいあったけど、なんとかジョン・セイルズの『メイトワン 1920』だけを観ることができた。

ジョン・セイルズの映画は1991年の『希望の街』が大好きで、ある都市に住むいろいろな人間たちが織りなす群像劇を一つどころに落とし込んで行くテクニックには唸った覚えがある。自分の中では、おりしも同じ年に公開されたローレンス・カスダン監督の『わが街』と双璧をなす群像劇の映画だった。

その『希望の街』の3年前に撮ったのが『メイトワン 1920』だった。この映画は、ウェストバージニア州の「メイトワン」と云う炭坑の街に労働組合の組織から派遣されてきたクリス・クーパーがいかにして待遇改善を求めてストライキを起こしている炭坑夫たちの信頼を得て、スト破りをしようとしていた黒人やイタリア移民をも巻き込んで会社に対抗できうる組織を作り上げたかを描いていた。

そこにはお決まりのドラマのパターンとして、内部に裏切り者がいて、そいつの画策でクリス・クーパーが窮地に追い込まれると云うサスペンス調が盛り込まれてはいたけれども、そこを一つの見せ場としていながらも単純な通過点としているところがジョン・セイルズの巧さだった。真犯人がわかって、さらに信頼を得ることとなったクリス・クーパーが、ベタなストーリーならば会社側を倒す労働者側の英雄として祭り上げられてハッピーエンドとなるところを、まだまだ全体を突き動かすほどの信頼を勝ち取っているわけではなく、最終的には彼が暴力に訴えることに反対していながらも両者が撃ち合いとなって多くの死傷者を出し、いつの間にかにクリス・クーパーも撃たれて死んでしまう。彼への銃撃シーンにカメラの焦点が結ぶこともなく、いつの間にか死んでいたことがわかるカメラのパンの無情さ。またまた、おもわず唸ってしまった。

見なければ、見なければとおもっていたジョン・セイルズの他の映画を追いかけねば。と云うか、ジョン・セイルズはもう撮らないのだろうか。

→ジョン・セイルズ→クリス・クーパー→アメリカ/1987→フィルムセンター→★★★★