ぼくのおじさん

監督:山下敦弘
出演:松田龍平、大西利空、真木よう子、戸次重幸、寺島しのぶ、宮藤官九郎、キムラ緑子、銀粉蝶、戸田恵梨香
制作:「ぼくのおじさん」製作委員会/2016
URL:http://www.bokuno-ojisan.jp
場所:109シネマズ木場

評価の確立している映画監督の中でも、次から次へと矢継ぎ早に映画を作る人もいれば、数年に1本しか作らない映画監督もいる。どうしてそのような映画製作へのアプローチの違いが生まれて来るのかはよくわからないのだけれど、一般的には製作期間の長い映画のほうが完璧に作られているイメージがあって、短期間で作った映画は昔のプログラムピクチャーのような軽い映画のイメージを醸し出してしまう。でも、ウディ・アレンや川島雄三のような多作の監督の映画が完璧じゃないのかと云えば、作品のクォリティにバラつきのあるは確かだけど、その中には素晴らしい作品も含まれている。だからこそ評価もされているわけだ。

山下敦弘監督はどちらかと云うと多作の映画監督で、前作の『オーバー・フェンス』のような純文学が原作の重いテーマの映画も撮ることもできれば、続けざまに公開された今回の『ぼくのおじさん』のような北杜夫の児童文学を原作とした飄々とした映画も撮ることもできてしまう。『リンダ リンダ リンダ』や『マイ・バック・ページ』のような素晴らしい映画を撮ったかとおもえば、『もらとりあむタマ子』のような、うーむ、と考え込んでしまうような映画も撮ってしまう。寡作の監督の中にも多作に監督の中にも大好きな監督がいるけど、ふらっと映画館を観に行った時に、今回は当たりだったな、とか、ああ今回はダメだったな、と云える玉石混交の作品を撮る多作の映画監督のほうにちょっぴりと人間性を感じて、たぶん、そっちの映画監督の方がちょっと好きだ。

『ぼくのおじさん』を観終わってからの感想は、まあ、なんと云うか、可もなく不可もなく、それなりに笑えたから楽しめたんだろうけど、だからと云って素晴らしい映画かと問われれば、うーん、人に勧められるような映画でもない。松田龍平の演技には「あまちゃん」の水口琢磨の延長線上のようなところに味が出ていて、甥役の大西利空との掛け合いもとても楽しいのだけれど、真木よう子や戸次重幸との絡みにはテレビドラマのような予定調和のシーンしかなくて、そこにもうちょっと工夫が欲しかったような気もする。真木よう子のことも、もっと奇麗に撮ってあげれば良かったのに! 戸田恵梨香の靴下も、あれでいいのか!

→山下敦弘→松田龍平→「ぼくのおじさん」製作委員会/2016→109シネマズ木場→★★★