監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ヴィンス・ヴォーン、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイシー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ライアン・コア、テリーサ・パーマー、リチャード・パイロス、レイチェル・グリフィス
原題:Hacksaw Ridge
制作:アメリカ/2016
URL:http://hacksawridge.jp
場所:ユナイテッド・シネマ浦和

子供のころ、ミリタリー系のプラモデルを作るのが好きだった。その流れから、第二次世界大戦についての本を読むのも好きだった。だから、太平洋戦争のミッドウェーとか、ガダルカナルとか、レイテとか、主要な戦闘の知識はあったし、沖縄の戦争のこともある程度は知っているつもりだった。でも、ハクソー・リッジ(浦添城址の南東にある「前田高地」の急峻な崖にアメリカ軍が付けた呼称)の戦闘のことはまったく知らなかった。硫黄島もそうだけど、地下にもぐった日本軍の必死の抵抗は数多くあって、それぞれの細かな激戦については文献として残ることもなく、すっかりと忘れ去られてしまう運命にあるんだよなあ。そういった意味においては、たとえハリウッド映画だったとしても、太平洋戦争での悲惨な激闘の歴史を注目することができたのは嬉しかった。

とは云っても、もうすでにインディアンをバッタバッタと皆殺しにするような西部劇が作られなくなってから久しいのに、日本兵がゾンビのごとく人間としての尊厳もなく殺されて行くのを見るのは、まあ、なんともいい気持ちはしない。でも、でも、今の時代は公平性もちゃんと担保されて、アメリカ兵側も同等にむごたらしく殺されてしまうのが時代性と云うものなのかもしれない。それに、阿鼻叫喚をきわめた戦闘のむごたらしさは、VFXの進化によって臨場感たっぷりに腹の底にまで伝わってくるので、日本兵側にも人間としてのドラマがあるだろう! なんて、クリント・イーストウッドの映画のようなものを求める気持ちをぐっと抑えて、そこはリアルな戦闘シーンを楽しむことだけ念頭に置いて観ることだけに専念した。そして楽しんだ!

メル・ギブソンって、監督の力量はそれなりにあるとはおもう。映画の主題に『がんばれ!ベアーズ』的な「強さに勝る弱さ」を持って来て、映画を観ている人のエモーションを、これでもか、と煽るところが抜け目ないけれど、その狡さを差し引いても面白い映画だった。

→メル・ギブソン→アンドリュー・ガーフィールド→アメリカ/2016→ユナイテッド・シネマ浦和→★★★☆