灰色の石の中で

監督:キラ・ムラートワ
出演:イーゴリ・シャラーポフ、オクサーナ・シラパク、ロマン・レフチェンコ
原題:Среди серых камней
制作:ソ連/1983
URL:
場所:アテネ・フランセ文化センター

キラ・ムラートワと云うモルドバ生まれの映画監督の名前は、今回のアテネ・フランセ文化センターでの「ソヴィエト・フィルム・クラシックス 逝去した監督・俳優編」のラインナップを見るまではまったく知らなかった。ネット検索をすると、日本での公開作品は少ないけれど、世界的には評価の高い女性の映画監督と云うことがわかって、ああ、世界にはまだまだ知らない映画作品がたくさんあるんだなあと、アテネ・フランセ文化センターのこのような上映会には感謝しかない。

『灰色の石の中で』は、ウラジミール・コロレンコの小説「悪い仲間」を原作とした映画で、母を亡くしたばかりの判事の息子ワーシャが、孤独から森をさまよっている時に知り合った浮浪児の兄妹との交流を描いている。と云っても、すぐに見て取れる登場人物の感情の起伏が描かれているわけではなくて、云わんとしているテーマをすぐに理解できる映画でもないので、下手をするととても退屈な映画に見えてしまう。でも、ソ連時代に人間の尊厳や自由を取り扱おうとすれば、このような混沌とした描写で表現せざるを得なかったのかもしれないし、そこが却って、フェリーニの映画のような、どこか魅力的な映画にはなっていた。

ソ連の当局により一部カットを余儀なくされて、クレジットから監督名を外したと云われているけど、どこがカットされたのだろう? それがあったら、おそらく、この作品の印象も変わっていたのかもしれない。

→キラ・ムラートワ→イーゴリ・シャラーポフ→ソ連/1983→アテネ・フランセ文化センター→★★★