監督:オリヴィエ・アサイヤス
出演:ギョーム・カネ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・マケーニュ、クリスタ・テレ、パスカル・グレゴリー
原題:Doubles Vies
制作:フランス/2018
URL:http://www.transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/
場所:ル・シネマ1

オリヴィエ・アサイヤスの新作は、老舗出版社の編集者と舞台女優の妻、そしてその出版社から私小説(のような小説)を出版している小説家と政治家の秘書をしている妻、この二組の夫婦を中心に、電子書籍やブログ、Twitter、Youtubeなどの流行のデジタルテクノロジーに翻弄されるフランスの出版業界と「互いの関係に新たな意義を見出し、受け入れ合う夫婦を語りたいと思った」(アサイヤス談)とを重なり合わせて描いているところが、まったくの想定外だったのでめちゃくちゃ面白かった。

とくに、従来からあるような私小説的な作品の扱いに苦慮する編集者が自社のデジタル化コンサルタントの若い女性と不倫して、さらにはアメリカ的な新しいテレビシリーズに進出している舞台女優がその私小説的なものを書いている小説家と不倫していると云う、「古いもの」と「新しいもの」が混沌としつつ、結局は既存の枠組みである「出版」や「舞台女優」や「夫婦」から抜け出せないでいる人間たちのドタバタ喜劇を見ているようで、可笑しくも身につまされるストーリーだった。

フランス人の(ちょっと上流の人たちの)生活には、友人知人や仕事関係の人たちと、外でのランチでも家でのディナーでも仕事の打ち合わせでも、集まってあーだこーだと議論を戦わせるのが一般的なのかなあ。そこでの会話劇にもなっているところが楽しかった。

→オリヴィエ・アサイヤス→ギョーム・カネ→フランス/2018→ル・シネマ1→★★★★