テリー・ギリアムのドン・キホーテ

監督:テリー・ギリアム
出演:アダム・ドライバー、ジョナサン・プライス、オルガ・キュリレンコ、ステラン・スカルスガルド、ジョアナ・リベイロ、オスカル・ハエナーダ
原題:The Man Who Killed Don Quixote
制作:イギリス、フランス、スペイン、ポルトガル、ベルギー/2018
URL:http://donquixote-movie.jp
場所:新宿シネマカリテ

テリー・ギリアムが『ドン・キホーテを殺した男』と云う新しい映画を作っているとのニュースをネットで読んだ記憶があるのだけれど、いつになっても日本では公開されないので、ああ、これはビデオスルーになってしまったのだと勝手に解釈していた。ところが、一昨年あたりに、ポルトガルのプロデューサーであるパウロ・ブランコが「映画の権利は自分にある」と主張して裁判を起こしたニュースが伝わってきて、おお、まだ完成していなかったんだと驚いた。

その『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(原題を直訳すると「ドン・キホーテを殺した男」)が、構想30年、企画頓挫9回(公式ホームページより)を乗り越えて、ようやく日本でも公開となったので観に行った。

ミゲル・デ・セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」を読んだことはないのだけれど、見聞きした情報やミュージカル作品『ラ・マンチャの男』から想像するに、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと云う男が現実と空想世界との区別がつかなくなり、自分をとりまくすべての状況を騎士道精神の物語設定におきかえてしまって、さまざまなトラブルを起こしてしまうと云うストーリーだと認識している。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』も、アダム・ドライバーが演じているCM監督が「ドン・キホーテ」を題材にしたCMを撮るうちに、撮影をしている監督としての現実と作り上げている「ドン・キホーテ」のCM(さらには学生時代に撮ったドン・キホーテの映画)との区別がつかなくなって、さまざまなトラブルに巻き込まれると云うストーリーだった。これって、もちろんアダム・ドライバーの役柄がそのままテリー・ギリアム自身であるとすぐに見て取れるのだけれども、そこに『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』自体を制作して行く過程でのさまざまなトラブルを起こすテリー・ギリアム自身とが重なって、二重構造どころか三重構造に見えてしまう部分がとても面白かった。

オーソン・ウェルズも「ドン・キホーテ」の映画を作ろうとして、その「ドン・キホーテ」の物語に取り込まれてしまった。テリー・ギリアムもまたしかり。天才監督は天才の書いたストーリーにあこがれて、そこに取り込まれてしまうものなのか。

→テリー・ギリアム→アダム・ドライバー→イギリス、フランス、スペイン、ポルトガル、ベルギー/2018→新宿シネマカリテ→★★★★