監督:刁亦男(ディアオ・イーナン)
出演:胡歌(フー・ゴー)、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、廖凡(リャオ・ファン)、レジーナ・ワン
原題:南方車站的聚会 The Wild Goose Lake
制作:中国、フランス/2019
URL:http://wildgoose-movie.com
場所:新宿武蔵野館

前作の『薄氷の殺人』がとても印象的だったディアオ・イーナン監督の新作。

湖北省の省都でもある武漢市と云えば、なんと云っても、新型コロナウイルス(COVID-19)の震源地として有名になってしまった。それ以前には、サッカーファンにとっては、AFCアジアカップ2004の舞台として、反日運動の高まりのなか日本代表が決勝で中国を破って優勝したおもいでの地でもあった。

その武漢市の勝手なイメージは、人も熱くて、気候も暑い。2004年のころの反日運動の暴徒化はすさまじかったし、内陸部の滞っているような熱い空気はそんな人々の不満をさらに駆り立てているようでもあった。だから、その人の多さから、そして衛生面の欠如から、何やら怪しげなウイルスが出てきてもおかしくないようなイメージだった。

ディアオ・イーナン監督の『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』の舞台である「鵞鳥湖」は架空の湖だったけれど、どうやらロケは武漢市の有名観光地「東湖」で行われたらしい。だから、映画を支配している全体的なイメージは武漢市の暑さだった。ただ、そこで暗躍する男と女は、どこか疲れ切ったような、広角泡飛ばして言葉をまくしたてる中国人のイメージとは違って冷めた人間ばかりだった。それがかえって不気味さを増していて、ちょっと入り込んだ路地裏にもいる人の多さからも、ソンビ映画に似た怖さを感じてしまった。まるでゾンビに襲われるがごとく、いろいろなものが、病気だけではなくて、負のオーラも、不満の爆発も、簡単に感染しそうだった。それをうまく映像化している映画だった。

ディアオ・イーナン監督のカットのつなぎ方は、なんだか、昔の日本映画を観ているようだった。黒澤明の『野良犬』とか。ファーストシーンの男と女が駅前で出会うシーンに懐かしさを感じるとともに、ああ、映画ってこういうものだよなあ、とおもうことしきり。

→刁亦男(ディアオ・イーナン)→胡歌(フー・ゴー)→中国、フランス/2019→新宿武蔵野館→★★★★