監督:ホン・サンス
出演:イ・ヘヨン、チョ・ユニ、クォン・ヘヒョ、キム・セビョク、シン・ソクホ、ソ・ヨンファ、イ・ユンミ、カン・イソ、キム・シハ
原題:당신얼굴 앞에서
制作:韓国/2021
URL:https://mimosafilms.com/hongsangsoo/
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町

ホン・サンス監督が次に組んだ女優はイ・ヘヨン。1960年代の韓国映画界で活躍したイ・マンヒ監督の娘であり、今までさまざま作品に出演してきたキャリア40年の女優であることを映画を観終えたあとに知った。そして、ホン・サンス監督の母親チョン・オクスクは、イ・ヘヨン監督の1968年の映画「休日」のプロデューサーであったと云う繋がりもあとから知ったのだった。そう考えるとこの映画はイ・ヘヨンのために作られた映画で、昨今、国際的にも認めらる韓国映画の礎を築いた人たちへのオマージュと云った意味合いもあるんじゃないのかとちょっと考えてしまった。

『あなたの顔の前に』は、アメリカから韓国の妹のもとに帰ってきた元女優サンオクの一日を、ホン・サンス得意の食事での会話シーンで繋いで行って、カフェ→トッポッキ店→飲み屋での中華料理と、食べる場所を移しながら、交わる相手を変えながら、次第にサンオクの現状が明らかになって行く映画だった。

冒頭に「私の顔の前にある全ては神の恵みです。明日はありません。過去もなく明日もなく、今この瞬間だけが天国なのです。天国になりえます」と云うモノローグを持ってきて、この宗教的なセリフに少し戸惑いながらも、でも次第にこのような言葉を吐くサンオクの気持ちが、切実に、ではなくて、緩やかに理解できて行く流れが気持ちよかった。

最近はガチャガチャしている映画が多いので、このような静かに流れる映画は貴重だ。

→ホン・サンス→イ・ヘヨン→ 韓国/2021→ヒューマントラストシネマ有楽町→★★★★