真珠のボタン

監督:パトリシオ・グスマン
出演:
原題:El Botón de Nácar
制作:フランス、チリ、スペイン/2015
URL:http://www.uplink.co.jp/nostalgiabutton/
場所:岩波ホール

パトリシオ・グスマン監督の『真珠のボタン』は、山形国際ドキュメンタリー映画祭のインターナショナル・コンペティションに出品されていたので山形で観る機会があったのだけれど、その時にはすでに岩波ホールで上映が始まっていて、山形では時間的に観られる映画が限られてしまうので『真珠のボタン』は東京に帰ってから観ればいいやとパスしていた作品だった。

山形国際ドキュメンタリー映画祭で山形市長賞(最優秀賞)を獲った『真珠のボタン』は、チリの南部に住んでいたインディオへのスペイン人入植者による虐殺の歴史からはじまって、ピノチェト政権下での左派系の人々への拷問・死刑へと続く、チリの歴史の暗い側面を扱っていた。チリのインディオたちが「海」とともに暮らし、その「水」を「宇宙」と密接に結びつけていたことから、この映画は「水」をテーマとして中心に置いて、歴史の犠牲となって海に沈められた死体の数々も「水」から「宇宙」へと還り、それがまたどこか違う星に生命をもたらすような輪廻転生のサイクルをもイメージさせるような映画になっていた。

チリの歴史についてはコスタ=ガヴラス監督の1982年の映画『ミッシング』を見て、1973年に軍事クーデターがあったくらいの知識はあったけど、インディオについてはペルーやボリビアのインディオと混同していて、まさかチリの海岸沿いの島々をカヌーで渡るインディオがいるとは考えもせず、そのような独特の文化を持つインディオがまるで動物を狩るように殺されていたことなんて想像だにもしなかった。日本にも暗い過去があるけど、どこの国にも何かしら暗部を抱えているのだなあとあらためて再認識した。そして、この映画が示すような大局的な視野を持つことによって、歴史認識や宗教から生まれる相互の憎しみも超越できるんじゃないかとおもったりもするけど、その高みには到達できない人間の未熟さがさらに強調されているようにも見える映画だった。

山形国際ドキュメンタリー映画祭ではパトリシオ・グスマン監督の『チリの闘い』三部作も一挙上映されていて、それを観ていればこの『真珠のボタン』のチリについての理解も深まっていたのではないかと後悔しきり。

→パトリシオ・グスマン→→フランス、チリ、スペイン/2015→岩波ホール→★★★☆