マルタ

監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:マルギット・カルステンセン、カール・ハインツ・ベーム、ブリジット・ミラ、イングリット・カーフェン
原題:Martha
制作:西ドイツ/1975
URL:
場所:アテネフランセ文化センター

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの映画をあまり見てこなかったので、機会があればちょこちょこと拾ってる。今回はアテネフランセ文化センターで「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2016」が行われたので、今まで何となく気になっていた『マルタ』を観てみた。

昨年、イマジカBSで見た『ベルリン・アレクサンダー広場』の素晴らしさの余韻がまだ頭にあったので、その路線の腹積もりで『マルタ』を観たら、もっと単純な、サディスティックな夫(カール・ハインツ・ベーム)を持ったマルタ(マルギット・カルステンセン)の心理サスペンス的な要素が強い映画だった。そしてその夫のサディズム描写が、例えば陽に焼き過ぎた肌をいたぶるシーンとか、「ダムの建築方法」の本を読め! とか、微妙にピントを外した残酷さにもおもわず笑ってしまうほどだった。映画の最後のほうの、突然の夫の登場に恐怖のあまり叫んでしまうマルタには映画館内でさえ笑いが起きたほどだった。これはあまりにも怖すぎて笑ってしまうホラー映画の感覚かもしれない。

ファスビンダーの代表作とは云えないのかもしれないけど、夫の常軌を逸した行為に責めさいなまれるマルタの「受け」の描写が素晴らしく、そこを見るだけでも充分にこの映画を楽しむことができた。次のファスビンダーの映画は何が見られるのか楽しみだ。

→ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー→マルギット・カルステンセン→西ドイツ/1975→アテネフランセ文化センター→★★★★