監督:サム・メンデス
出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、アンドリュー・スコット、リチャード・マッデン、クレア・デバーク、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ
原題:1917
制作:イギリス、アメリカ/2019
URL:https://1917-movie.jp
場所:109シネマズ木場
全編ワンカットの映画と云えば、真っ先におもい浮かぶのがヒッチコックの『ロープ』(1948)で、まだフィルム時代のワンカットとは、巻の切り替えにうまく黒味などを入れて、ワンカットに見えるようにする涙ぐましい努力が必要だった。ところがデジタルの時代となって、そんな苦労はいらなくなって、やろうとおもえば誰でもワンカットの映画(本番1回の長回し)が撮れる時代になった。とはいえ、上田慎一郎の『カメラを止めるな!』がドタバタで見せたように、演技や撮影からメイクにいたるまでミスの許されないワンカット撮影は誰得なんだ? とトライする人は極端に少ない。やったとしても、『ロープ』の時代と同じようなテクニックを使って、ところどころでカット(休憩)する映画がほとんどだ。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)もネメシュ・ラースローの『サウルの息子』(2015)も厳密云えばワンカット映画ではないとおもう。
サム・メンデス監督の『1917 命をかけた伝令』の惹句は「全編ワンカット!」だった。ああ、またテクニックを使ってワンカットに見せているんだろうなあ、と映画を観たら、いやいや、しっかりとフェードアウトして時間経過してるじゃん、になった。でも、ほとんどワンカットに見える映画は、厳密に云う本番1回の長回し映画をやる人がいない以上、「全編ワンカット」と謳っても良いほどにスムーズに流れる映画だった。
ほぼワンカットに見えるこの映画は、主人公たちに寄り添うカメラから見える第一次世界大戦の戦場に緊張感がみなぎっていた。撤退して敵はいないとの情報が真実なのか疑心暗鬼に前へと進む戦場が、死体だらけの戦場が、まるでホラー映画のように怖かった。そして、進む途中に見える桜の林や、闇夜に燃える建物が美しかった。この恐怖と美のコントラストを表現させたロジャー・ディーキンスの撮影が素晴らしかった。サム・メンデスは、『アメリカン・ビューティー』(1999)でも、『ジャーヘッド』(2005)でも、『007 スカイフォール』(2012)でも、いつも恐怖と美を映画の中に盛り込むことが巧い!
→サム・メンデス→ジョージ・マッケイ→イギリス、アメリカ/2019→109シネマズ木場→★★★★