監督:島田陽磨
出演:
制作:日本電波ニュース社/2021
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場所:被爆者の声をうけつぐ映画祭、武蔵大学江古田キャンパス武蔵大学50周年記念ホール

福島第一原発事故から10年が経って、帰宅困難区域も次第に減ってきて、福島の人々にも以前の暮らしが戻りつつあるんじゃないかと勝手におもい込んでしまう。でも、そんなことはまったくなくて、一度崩壊してしまったコミュニティが復活することはむずかしくて、精神的に傷ついた人たちはさらに追い込まれて行ってしまってる。島田陽磨監督の『原発故郷3650日』では、自死してしまった息子に責任を感じてアルコールに走ってしまう父親、東京で避難生活を送っている家族の閉塞感、そしてそのような心の病を負った人たちを助けようとする医師やNPOの奔走を描いている。

アメリカなどに比べて、日本ではメンタルヘルスケアを受けるシステムがしっかりとしていなくて、まだまだ精神的な疾患を個人の責任に追いやる昔ながらの風潮が根強く残っているような気もする。アメリカ映画で見るような、一人に必ず一人のカウンセラーが付いているような世の中になっていれば、自然災害や大規模な事故に会った人たちが、事後に精神的な疾患を負って関連死して行くようなことがちょっとは防げるんじゃないかと、この映画を観ての真っ先の感想だった。

映画を観たあとに、原発事故損害賠償群馬裁判原告代表の丹治杉江さんの講演があった。福島第一原発の現状を聞けば暗澹たる気持ちにはなるのだけれど、放射線防護学者の安斎育郎さんをリーダーとする「福島プロジェクト」が提唱する「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に怖がる」をしっかりと実行しなければならないことも同時に痛感してしまった。その中でも「過度に恐れず」はとても難しい。誰だって事態を悪い方向に考えてしまうのが常だから。廃炉についても、汚染水問題についても、子どもたちの甲状腺がんのことについても理性的に怖がりながらもことを分析して解決して行って欲しいとはおもう。

→島田陽磨→→日本電波ニュース社/2021→被爆者の声をうけつぐ映画祭、武蔵大学江古田キャンパス武蔵大学50周年記念ホール→★★★☆