フォックスキャッチャー

監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、シエナ・ミラー、マイケル・ホール
原題:Foxcatcher
制作:アメリカ/2014
URL:http://www.foxcatcher-movie.jp
場所:ユナイテッドシネマとしまえん

ポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』は、戦争で心を病んだ男が流れ着いた先で、欠落した心を取り戻そうとするかのように、新たな人間関係を構築する際に見せる繊細な感情のゆらぎのようなものを映像化していた。ベネット・ミラーの『フォックスキャッチャー』を観ていて、その『ザ・マスター』を少なからずおもい出してしまった。ただ今回は、「マスター」に成ろうとして成り得なかった男と、「マスター」を求めてはっきりと裏切られた男の明快なストーリーだったけど。

子供の頃にしっかりと築き上げなければならない親子関係に欠損が生ずると、精神的にも充足されないまま成長してしまって、それをどこかで補おうとする力が働いたとしても不完全な形でしか達成できず、理不尽な不満しか後には残らない。そして、精神的な欠落が異常な行動へと走らせてしまう。デイヴ・シュルツを殺害したジョン・デュポンとはそんな男だった。それをスティーヴ・カレルが容貌もそっくりに演じていて、醸し出す負のオーラも一緒に演じているのが素晴らしかった。

ジョン・デュポンを「マスター」と仰ごうとするマーク・シュルツを演じるチャニング・テイタムも、兄のデイヴ・シュルツとの関係に影を落とす負のオーラを満開させていて、似たもの同士の二人がぶつかる先には不幸しか待ち受けていないだろうと云う予感しかなく、その息苦しさが支配しているストーリーはある意味、緊張感があって、ゾクゾクするほど面白かった。

このようなストーリーが好きなのは、ジョン・デュポンに感情移入できるからなんだろうなあ。まあ、普通じゃない。

→ベネット・ミラー→スティーヴ・カレル→アメリカ/2014→ユナイテッドシネマとしまえん→★★★★