監督:トマス・ビンターベア
出演:マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネヴィー、スーセ・ウォルド
原題:Druk
制作:デンマーク、オランダ、スウェーデン/2020
URL:https://anotherround-movie.com
場所:新宿武蔵野館

今年のアカデミー外国語映画賞はデンマークのトマス・ヴィンターベア監督が撮った『アナザーラウンド』が受賞した。その授賞式のときに流れた映画のダイジェスト版を見ると「呑んべえ讃歌」のような映画なんだろうなあとイメージできる内容だった。

実際に映画を観てみると、生徒や生徒の親からダメ教師の烙印を押されてしまったマッツ・ミケルセンがアルコールのちからを借りて、次第に
活気のある授業ができるようになる様子を描いていたので、途中までは「呑んべえ讃歌」の内容で間違いのない映画だった、ところが、酒っていうものは自分で飲む量をコントロールできなくなってしまう飲み物で、仲間の教師をも巻き込んで酒に溺れていく過程をも合わせて描いているところが単純な「呑んべえ讃歌」の映画にはしていなかった。

トマス・ヴィンターベア監督がアカデミー賞の受賞スピーチで、この映画の撮影開始から4日後に娘が高速道路での事故によって亡くなったことを明かしていた。その娘はこの映画のマッツ・ミケルセンの娘役が予定されていたということだった。

娘が亡くなる前の段階では「アルコールがなければ世界の歴史は違っていただろうという説に基づくアルコールの祝祭」がこの映画の主題だったらしい。ところが娘の死を受けて「人生に目覚めることについて」の要素が取り入れられて脚本は書き換えられて行ったということだった。つまり、なんとなくコメディっぽい含みも持たせて映画が進行して行くのに対して、途中から次第に深刻なドラマに発展して行くのは、こんなトマス・ヴィンターベア監督の実際の悲劇が関連していたんじゃないかと想像できてしまう。

自分としては、コメディっぽい流れのままに映画が帰結していたほうが好みの映画だったのかもしれないのだけれど、娘の死を受けて、のんきにコメディを作っている場合じゃなくなってしまった心情もわかる気がして、なんとなく複雑なおもいの残る映画となってしまった。

→トマス・ビンターベア→マッツ・ミケルセン→デンマーク、オランダ、スウェーデン/2020→新宿武蔵野館→★★★☆