監督:エドガー・ライト
出演:トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ、マット・スミス、ダイアナ・リグ、リタ・トゥシンハム、マイケル・アジャオ、シノヴェ・カールセン、テレンス・スタンプ
原題:Last Night In Soho
制作:イギリス/2021
URL:https://lnis.jp
場所:Movixさいたま

あれ? エドガー・ライトの新作が来ている! と、なんの知識も入れずにあわてて『ラストナイト・イン・ソーホー』を映画館へ観に行ったら、ちょっと意外な60年代イギリスへの憧憬の情にあふれたサイコロジカルホラー映画だった。オープニングからピーター&ゴードンの「愛なき世界(A world Without Love) 」(1964年)が流れて、なんだかタランティーノっぽいなあ、とおもいながら観ていたら、途中から「クイーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイが出てきて、またすっかり彼女の瞳に吸い込まれてしまった。

アニャ・テイラー=ジョイの顔立ちは、オードリー・ヘップバーンが「ファニーフェイス」と云われていたころ(もちろんリアルタイムではない)をおもい出す風貌で、目が大きすぎて、両目が離れすぎているところのアンバランスさが、かえって彼女の美貌を引き立たせる結果になっていて、おもわずじーっと注視せざるを得ない女優だ。Netflixの「クイーンズ・ギャンビット」で彼女を見てからと云うものの、ふと目の大きい人形などを見たり、目の瞳を象徴させた広告を見たりするとアニャ・テイラー=ジョイの幻影が姿を表すようになってしまった。

そんなアニャ・テイラー=ジョイの濃いめの美貌はなんとなく60年代のイギリスにぴったりで、そこに『コレクター』(1965)や『世にも怪奇な物語』(1968)が印象的だった、やはり濃い! テレンス・スタンプとか、『女王陛下の007』(1969)のボンドガールだったダイアナ・リグをキャスティングしているところは、そこもまたタランティーノ風の60年代へのリスペクト満載の映画になっていた。

映画の体裁としてはサイコ的なホラーなんだけれど、どこかイギリス風のゴシックホラーも匂わせていて、ちょっとだけどジャック・クレイトンの『回転』(1961)をおもい出してしまった。最初にアニャ・テイラー=ジョイと云う女優を意識させた映画『ウィッチ』のイメージも兼ねると、彼女を使ってもっとゴリゴリのゴシックホラーを誰かが撮ってくれても良いのかもしれない。

と、いつもどおりエドガー・ライトの映画を十分に楽しむことができた。が、アニャ・テイラー=ジョイにばかり目が向いて、トーマシン・マッケンジーがすっかり霞んでしまった。だから最後のハッピーエンドも、めでたしめでたし、のような感覚にはまったくならなかった。ちょっとトーマシン・マッケンジーには可愛そうな役柄だった。

→エドガー・ライト→トーマシン・マッケンジー→イギリス/2021→★★★☆