監督:大島新
出演:小川淳也、平井卓也
制作:ネツゲン/2021
URL:https://www.kagawa1ku.com
場所:シネ・リーブル池袋

大島新監督のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観て、小川淳也と云う衆議院議員がいることを知った。とても真っ直ぐで、あるべき政治を熱心に模索していて、誰に対しても聞く耳を持っている政治家に見えた。へー、こんな政治家がいるんだ、と云う感想を持つと同時に、そんなにピュアだったら政治家としてヤバイんじゃないの、と云う感想も同時に持ってしまった。タイトルの『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、そのピュアな部分に対するダメ出しを意味しているようにも見えてしまった。

『なぜ君は総理大臣になれないのか』の続編の『香川1区』は、昨年の10月31日に投開票が行われた衆議院議員選挙における小川淳也の戦いを描いていた。香川1区には地盤も看板(地位)も鞄(カネ)も持っている自民党の平井卓也がいて、そんな絶大なる敵に対抗する無力な勇者の奮闘を見るのはとても楽しかった。ラストには、クッパ大王にならぬワニ大臣を倒してしまうんだから、まるでゲームのボスキャラを倒したときのような爽快感があった。

大島新監督はこの映画で、もちろんタイトルに『香川1区』としていることからわかるように衆議院議員選挙をメインにして映画を撮っているわけだけれども、同時に小川淳也の真っ直ぐでピュアな部分の危うさにもスポットを当てていて、小川淳也自身もその性格を政治家としてどのようにコントロールすべきなのか苦悶しているところも出てくる。正直者はバカを見るのが政治の世界のようにも見えるし、いや、このままの正直者で押し通せば、まるで絵空事のようなフランク・キャプラの『スミス都へ行く』(1939)を地で行くハッピーエンドが待っているような気もするし。

それから、やはり注目すべきところは、平井卓也の地盤、看板、鞄の部分だった。なぜ地方で自民党が強いのか。前回の選挙で香川1区の中でも特に弱かった小豆島に小川淳也の娘たちが乗り込んで行ったとき、島のおっちゃんからの「小川さんのことは尊敬しているんだけどね、、、、」の言葉が、下手なことをすると村八分にされかねない、がんじがらめに縛られている日本の田舎のコミュニティを浮き彫りにしていた。地元を潤すのが与党主導のインフラ整備しかなかった時代のしがらみをどこまで続けるんだろう? こんな地方の古い体質を変えて行くのは次世代の若い人たちで、そこに対して訴える力を持っていたのが小川淳也だったのかもしれない。

この衆議院議員選挙のあと、敗北の責任を取って立憲民主党の党首、枝野幸男が辞任した。そして、小川淳也がやっとこさ20人の推薦人を確保して、立憲民主党の党首選挙に立候補した。でもそのことは『香川1区』としてはまた別の話しで、次回の映画はそこから始まるんだとおもう。ああ、早く次回作が観たい。

→大島新→小川淳也→ネツゲン/2021→シネ・リーブル池袋→★★★★