監督:今井友樹
出演:岡林利保、川村芳久、川村紗耶佳、北岡竜之、黒石菊野、黒石正種、繁村周、清和研二、田岡果穂、田岡佐奈、田岡重雄、高橋太知子、高橋寅井、高橋晴雄、高橋富士子、高橋正代、田村寛、田村亮二、筒井茂位、筒井政和、筒井良則、筒井千代、筒井信子、筒井秀、筒井藤代、濵田博正、古松信彬、山下剛司、和田章、和田末子、和田節子、和田光正、和田守正、和田博、和田福美子、スティールパンの演奏:上東パンの学校(高知カリビアンハーツ)の皆さん、ナレーション:原田美枝子
制作:シグロ/2021
URL:https://palabra-i.co.jp/asuwoheguru/
場所:ポレポレ東中野

先日、長らく在庫切れしていた民族文化映像研究所(民映研)総覧の新編集版作成を手伝うために、DVDで民映研の過去の映画を何本か見ることになった。その中に、『薩摩の紙漉』(1990年)、『小川和紙』(1992年)と云う映画があった。どちらも和紙の制作過程を追ったドキュメンタリーで、原料の楮(こうぞ)の皮から繊維質を取り出して紙漉きをする工程が丁寧に描かれていた。この2つの映画の他にもう一つ和紙を扱った映画『越前和紙』(1990年)があって、和紙づくりを追うことがまるで民映研のひとつのライフワークとしてのテーマとなっているようにも見えてしまう。

その民映研の所長であった姫田忠義さんに(最後に?)師事していた今井友樹監督の最新作も、なんと、和紙づくりを追うドキュメンタリーなのにはびっくりした。これは、もしかして、民映研のイズムを継承して行くことの、今井友樹監督なりの宣言なんだろうか? この映画を観ながらそんなことを考えてしまった。

地域の人たちが集まって楮(こうぞ)を刈り、それを束ねて蒸して、柔らかくなった皮(黒皮)を剥いで乾かす。乾燥したその黒皮を川に漬けて、柔らかくなった黒皮を削り、傷を取り、美しい繊維だけを選別して行く。この一連の共同作業は、日本の里山で行われていたものづくりの原風景にも見えるもので、それを記録として残そうとした民映研の活動はとても大切なものだったとおもう。だから、誰かが継いでいくべきものだったのではないかと過去の映画を見ておもっていた矢先の『明日をへぐる』の公開だった。

ドキュメンタリー映画を作る環境がますます厳しさを増して行くなかで、制作費を集めることに何かしらの話題性が必要になるのだとしたら、民映研が行ってきた活動を引き継いで行くことを謳ってしまったほうが良いんじゃないかとおせっかいにも考えてみたりしてしまった。

まあ、とにかく、どんな方向の映画を撮ろうと、今井友樹監督の次回作も楽しみです。

→今井友樹→ナレーション:原田美枝子→シグロ/2021→ポレポレ東中野→★★★☆